2026年8月31日、三重県伊勢市の明倫商店街で大規模な火災が発生しました。
報道によると、店舗や住宅など58棟が焼け、鎮火までおよそ44時間を要したとされています。
長く商売を続けてきたお店だけでなく、暮らしの場や思い出の品、地域のつながりまで失われた方もいらっしゃいます。
被災された皆さまに、心よりお見舞い申し上げます。
明倫商店街の火災を一つの地域だけの出来事として終わらせず、全国に残る古い商店街をどのように守っていくのか、みんなで考える必要があるのではないでしょうか。
古い商店街には、火が広がりやすい条件がある
古い商店街では、木造建築が隣り合い、建物同士の間隔が狭い場所があります。
通路や周辺道路が狭ければ、消防車両の進入や消火活動が難しくなることもあります。
さらに、店舗と住居が一体になっていたり、空き店舗の管理状況を把握しにくかったりすることもあります。
アーケードが煙や熱の逃げ方、放水活動などに影響する可能性も考えなければなりません。
消防庁は、2016年の糸魚川市駅北大火を受け、木造建築物が密集した地域では、強風などの条件が重なると火災が大規模化する危険があると指摘しています。
ただし、「古い建物だから危険」「商店街の管理が悪かった」と単純に決めつけることはできません。
明倫商店街の火災についても、出火原因や延焼の詳しい経緯は、正式な調査結果を待つ必要があります。

全国では、どのような取り組みが行われているのか
古い町並みや商店街を守る取り組みは、全国各地で進められています。
京都市の先斗町では、地域団体、消防、警察、区役所などが連携し、「先斗町このまち守り隊」を結成。
地域内の店舗を訪問して、消火器や火災警報器の設置を呼びかけるほか、飲食店や住民も参加する合同訓練を行いました。
錦市場でも、消防署や消防団が商店街と協力し、店舗ごとに厨房設備や暖房器具などの防火点検・指導を行っています。
東京都や神奈川県などでは、消防車が入りにくい木造密集地域に「スタンドパイプ」を配備する取り組みがあります。
道路上の消火栓などに接続して放水する資機材で、火災のごく初期に地域住民が対応する手段の一つです。
国土交通省も、老朽建築物の建て替えや除却、道路・公園などの整備を支援しています。
道路や空地は避難場所になるだけでなく、延焼を食い止める空間としても重要です。
このように全国で対策は行われていますが、すべての商店街に同じような設備や訓練体制が整っているわけではありません。
店舗ごとに建物の所有者が違うことや、改修費用、店主の高齢化、空き店舗の増加などが、一体的な整備を難しくしています。

今後、古い商店街を守るために必要なこと
まず必要なのは、商店街全体の「防火点検」です。
消火器や火災警報器は設置されているか、電気配線や分電盤、ガス機器、厨房設備に異常はないか。
避難口の前に荷物が置かれていないか。
空き店舗が適切に管理されているか。
各店舗だけに任せず、消防や電気・建築の専門家と一緒に確認する仕組みが必要です。
次に、夜間や定休日も想定した訓練です。
昼間に店主がそろっているとは限りません。
「誰が119番通報するのか」
「どこに消火器があるのか」
「高齢者や観光客を誰が誘導するのか」
「どの道へ逃げるのか」
これらを具体的に決めておくことが大切です。
訓練では、出火場所を事前に知らせない方式や、複数の避難経路が使えない想定も役立ちます。
消火器などは、設置するだけでなく、実際に扱える人を増やさなければ十分に生かせません。
また、商店街の防災マップを作り、消火器、消火栓、スタンドパイプ、避難経路、空き店舗、高齢者が暮らす場所などを共有することも必要です。
紙の地図だけでなく、関係者がスマートフォンでも確認できれば、情報を更新しやすくなります。

「残すか、壊すか」ではなく、安全に受け継ぐ
古い商店街には、その地域で暮らしてきた人たちの記憶があります。
昔から続く店、顔なじみとの会話、祭りや行事、子どもの頃の思い出・・・
それらは、新しい建物を造るだけでは取り戻せません。
だからこそ、防災を理由に古い町並みをすべてなくすのではなく、その魅力を残しながら安全性を高める方法を考えたいと思います。
⭕️防火改修への補助
⭕️共同建て替え
⭕️空き店舗の適正管理
⭕️消防水利や防災空地の確保など
個人では難しい対策を行政、商店街、地域住民、専門家が一緒に進めることが必要です。
商店街を守る防災は、設備を置くだけでは完成しません。
日頃から声を掛け合い、異変に気づき、誰か一人に負担を集中させない関係をつくること。
それこそが、地域の大切な場所を次の世代へつなぐ力になるのではないでしょうか。
明倫商店街の火災を忘れず、同じような被害を繰り返さないために。
古い商店街の魅力と、人々の命や暮らし。その両方を守る防災を、地域全体で考えていく必要があります。

火災への備えは、地域全体の取り組みとともに、家庭や店舗でできる小さな点検から始まります。
火災警報器の交換時期や消火器の使用期限も、この機会に確認しておきたいですね。
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